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その投稿、逮捕されるかも?誹謗中傷と名誉毀損の境界線を弁護士が解説


本日のテーマはこちらです。

「その投稿、危ないかも?何を投稿すると逮捕されるのか」

有名人の不祥事などが報道されると、「けしからん!」という気持ちになることがありますよね。
その怒りや不満をSNSや掲示板に投稿してしまうと、内容によっては逮捕される可能性があるんです。

この動画では、どんな内容の投稿がアウトになるのか、そして誹謗中傷に関する法律とその具体例
さらに誹謗中傷にあたる可能性のある言葉の一覧
もし投稿してしまったらどうなるのか、された側はどうすればよいのかについて、
弁護士の立場から、なるべく専門用語を使わず、わかりやすく解説していきます。


目次

誹謗中傷とは?法律上の定義を解説

まず、「誹謗中傷と法律」について簡単にお話しします。
一般的な「批判」や「批評」の範囲を超えると、「誹謗中傷」とみなされます。
その場合、損害賠償請求を受けたり、場合によっては警察沙汰になることもあります。

ここでは主に「名誉毀損」と「侮辱」の2つが関係してきます。
たとえば、「今の総理はある建設会社から賄賂を受け取っている」といった具体的な事実を投稿すると、「名誉毀損」にあたります。
一方で、「今の総理は無能だ」や「役立たずだ」といった抽象的な表現は、「侮辱」に該当します。


名誉毀損と侮辱の違いとは?

具体的な事実を含む発言のほうが被害が大きいため、名誉毀損は3年以下の懲役または50万円以下の罰金と重い刑罰が科されています。
侮辱については、1年以下の拘留または30万円以下の罰金と、やや軽い処分です。

この2つをどう見分けるかというと、「証拠によって証明できるかどうか」がポイントになります。
賄賂であれば、受け取っている写真や録音が証拠になりますが、
「無能」や「役立たず」といった表現は証明が難しいため、「侮辱」と判断されます。


実際にあった侮辱罪の事例

あるテレビ出演者に対して「早く消えてほしい」「吐き気がする」などと投稿した人が、9000円の過料を科されました。
また、交通事故の遺族に「金目当て」や「新しい女を作ってやり直せ」などと投稿した人は、侮辱罪で29日間の拘留となりました。

さらに、女性に対して「ブタ」「ブス」「歩く整形」などと投稿した人も、過料9000円で処罰されています。

※近年は法律改正により、侮辱罪の罰則が強化されており、1年以下の懲役または30万円以下の罰金が科される場合もあります。


名誉毀損の事例とその重さ

美容クリニックの院長に対して「緊急速報・ガチで逮捕」といったスレッドをネット上に3回立てた人には、
懲役10ヶ月(執行猶予3年)という判決が下されました。

また、男性弁護士の顔写真に猫耳をつけ、「乳首や胸を見せびらかすこともあります」などと投稿した人は、
逮捕され、実名報道もされました(処分は不起訴・起訴猶予)。


投稿前に確認!誹謗中傷に該当しうる言葉とは?

このように、ネット上での発言には法律的な責任が伴うことを忘れないようにしましょう。
誹謗中傷にあたると判断されやすい言葉や表現については、次のパートで詳しく紹介していきます。

虚偽の事実は名誉毀損になる可能性が高い

例えば名誉毀損にあたるものとして、「嘘の内容(虚偽の事実)」を投稿するケースがあります。
たとえば、私・加藤は破産していないにもかかわらず、「加藤弁護士は過去に破産した」と書いた場合、
これは虚偽の事実に基づく名誉毀損となる可能性が非常に高いです。

また、「詐欺師」「人殺し」「悪徳商法をしている」「枕営業をしている」「性病にかかっている」なども、
いずれも具体的な事実を示す表現ですので、名誉毀損として誹謗中傷に該当する可能性が極めて高い言葉です。
このような表現は使わないようにしましょう。


侮辱とされる言葉の具体例

次に、侮辱に該当する言葉としては、「ブス」「ババア」「ホス狂い」「乞食」などがあります。

たとえば、実際に私が扱った案件で、プログラマーに対して「乞食」と書いた人が、
侮辱として発信者情報開示の手続きを受けています。

こうした言葉も誹謗中傷とされる可能性が高く、慎重に扱う必要があります。


怒りに任せた投稿をしてしまったら?

では、もし怒りに任せて投稿してしまったら、どうすればいいのでしょうか。

実際に警察から事情聴取の連絡が来たり、呼び出しを受けることがあります。
また、民事では「意見照会書」といって、プロバイダから「あなたが投稿した件について開示してもよいか」という問い合わせが届くことがあります。

刑事・民事いずれの場合でも、初動を誤ると非常に危険です。
そのため、できるだけ早く弁護士に相談しましょう。

相談料は一般的に30分で5,500円程度です。投稿内容がどのようなものか、資料を持参して相談すると良いでしょう。

よくあるのが、ネットで「発信者情報を開示してやる」や「警察に行く」などと書かれて、
慌ててしまい、どうしたらいいかわからず相談に来る方です。

本当に心配であれば、弁護士に相談して早めに謝罪するという対応も選択肢の一つです。
自己判断で動くと、かえって状況が悪化することもあるため、専門家に相談するようにしてください。


誹謗中傷された側はどう対応すべきか?

一方で、誹謗中傷されてしまった側の対応についても見ておきましょう。

まず何より大切なのは、証拠を確保することです。
スクリーンショットやPDFなどで、投稿内容・日時を記録しておいてください。

そして、できるだけ早く弁護士に相談しましょう。
なぜ急ぐ必要があるかというと、プロバイダ側の通信記録は3ヶ月、長くて半年から1年で消えてしまうからです。

「1年前に誹謗中傷された」と言われても、すでにデータが残っていないケースが少なくありません。
ですので、記録が残っているうちに早く行動することが重要です。

また、もしも投稿内容が自分や家族の身の危険に関わるものであれば、直ちに警察に届け出てください


発信者を特定するための費用とリスク

弁護士に依頼して発信者情報を開示請求した場合、発信者を特定するまでに少なくとも50万円以上
場合によっては100万円を超える費用がかかることがあります。

さらに、特定までに数ヶ月〜1年ほどかかるケースもあります。
また、高額な費用と時間をかけても、相手を特定できないこともあるというリスクも知っておいてください。


ネット投稿のリスクと心構え

最後に本日のまとめです。

スマートフォンは非常に気軽に投稿できるツールですが、ネット投稿は全世界に向けた発信であり、
居酒屋で仲間に愚痴を言うのとはまったく違う行為です。

自分では「正当な批判」と思っていても、受け手は「中傷された」と感じることもあります。
とくに「いいね」や「正義感」から発言がエスカレートしてしまうこともあるため、注意が必要です。

結論としては、人前で使わないような汚い言葉をネットに投稿しないことが鉄則です。
その場の感情で投稿してしまったことが、数十万円〜100万円を超える損害賠償
実名報道、刑事罰、デジタルタトゥーにつながることもあります。

一時の気晴らしが、一生消えない傷になることもあります。
くれぐれも慎重に行動してください。

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