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弁護士に向いている人・向いてない人の決定的な違い【現役弁護士が語る適性】

僕は今、数学を教えていますが、それとは別に、これから弁護士を目指す人に向けて、「弁護士になったらやっておいたほうがいいこと」や、「やる必要はないこと」についてのアドバイスをしたいと思います。

弁護士を目指す以上、司法試験の勉強に必死になることは当然です。しかし、それ以外に何をやっておいた方がいいかと聞かれれば、いくつかあります。技術的な面で言えば、たとえば簿記の知識があると得ですし、物理や化学に強ければ、知財関係、特許関連の仕事に役立つこともあるでしょう。

でも、私が一番重要だと思っているのは、「人間の行動や心理に常に関心を持つこと」です。裁判というのは、人間の行動の結果として生じた紛争が対象です。そこでは証拠を元に事実を推測していきますが、その際に必要なのが「人間に対する洞察力」なんです。

世の中にはいろいろな価値観を持った人がいて、立場や背景によっても考え方や行動は変わります。「なぜこの人はこういう行動をとったのか?」と、常に疑問を持てる人は、弁護士に向いていると思います。

中学・高校時代の話でもいいんですが、たとえば友達や先生、近所の人、あるいは親でも構いません。自分とは違う行動をした人に対して、「なぜあの人はあんなことを言ったのだろう」「なぜこんな行動をしたのだろう」と考えられることが大切です。

それをただ流すのではなく、「なんでだろう?」と突き詰めて考えてみてください。直接聞いてみるのもいいし、自分なりに推測するのでも構いません。その人の価値観や性格を考慮しながら仮説を立ててみる。その積み重ねが、実際に弁護士として事件を担当する際に、相手の行動の背景を見抜く力に繋がってきます。

たとえば、訴訟の中でさまざまなストーリーが語られますが、どれが真実なのかを見抜く力は、こうした洞察力によって養われます。

目次

弁護士に必要な能力


国語と数学は弁護士に必須の素養

もう一つ、全く別の観点になりますが、「国語」と「数学」は、弁護士になる上でとても重要な科目です。

国語は、書いてある文章の内容を正確に理解するために必要ですし、自分が言いたいことを文章にして伝える力も求められます。これは弁護士の仕事では欠かせません。

また、数学というのは、論理の積み重ねの訓練に非常に役立ちます。定理があって、それを組み合わせていくと必然的に答えが導き出される。それと同じで、論理的に順序立てて説明したり、文章を書いたりするためには、数学的な論理思考が不可欠です。

中には、「自分は数学が苦手だから…」という人もいますが、実は文章読解にも論理的な構造があるため、数学的思考が弱いと正確な意味の理解にも影響が出ます。

もちろん、大学レベルの高度な数学までは必要ありません。ただ、中学3年生程度の数学は問題なくこなせるくらいであれば、弁護士としての素養があると考えて良いと思います。

今、学生の方で「数学が極端に苦手」「国語がどうしてもダメ」という人は、少し厳しい言い方になりますが、弁護士に向いていない可能性はあります。ただ、努力次第で克服できる領域なので、希望を持って学んでいってほしいです。

こんな人は弁護士に向いていないかもしれません

ちょっと厳しい言い方かもしれませんが、正直に言うと、「こういうタイプの人は弁護士としてやっていくのは難しいかも」と思うことはあります。

たとえば、人に興味がない人
弁護士の仕事って、法律だけを扱うように見えて、実は「人間を扱う仕事」なんです。依頼者の話を聞き、相手の言動を読み解き、裁判官や検察官、他の弁護士とも交渉していく。すべてが人と人との関係で成り立っています。
だから、そもそも「人の話を聞くのが面倒」とか、「他人の感情に無関心」という人は、やっぱり向いていないかもしれません。

それから、言葉で表現するのが苦手な人も、少し苦労するかもしれません。
文章を書く力はもちろん、裁判では相手に納得してもらえるように、言葉で理路整然と主張を組み立てる必要があります。感情だけでは動かない世界なので、自分の考えをきちんと伝えられるスキルは必須です。

また、自分の価値観だけで物事を判断する人も、弁護士には向いていないと思います。
弁護士になると、いろんなタイプの人と関わります。自分とは全く違う考え方や背景を持った依頼者、時には「なんでこんなことを?」と思うような相手方とも向き合わなければいけません。そういう時に、自分の価値観だけで切り捨ててしまうと、正しい判断ができませんし、依頼者の信頼も得られません。

あとは、諦めが早い人ですね。
案件によっては長期戦になることもありますし、途中で思うように進まないことだって多いです。それでも粘って、いろんな角度から考え直して、最後まであきらめずに取り組むことが大事です。

もちろん、これらの要素は「努力次第で変われる」ものも多いです。でも、もし「全部あてはまるかも…」と感じたら、弁護士の仕事は結構しんどく感じるかもしれません。

人の心理を読むことが求められた実際の場面

実際に、私が弁護士として関わった事件で、「人の心理を読み取る力」が非常に重要だった場面があります。

あるとき、依頼者が「相手方が約束を破ってお金を返してくれない」と言って、民事事件の相談に来られました。一見すると単なる金銭トラブルに見える案件でしたが、話を聞いていると、相手方が言っていることとやっていることに微妙なズレがあることに気づいたんです。

具体的には、相手方は「今はお金がなくて払えない」と言いながら、SNSでは高級レストランや旅行の写真をアップしていたり、周囲には「返す気はない」と漏らしていたりした。
しかし、本人に問いただしても「そんなつもりはない」と繰り返すばかりで、表面的な言葉だけでは本心が見えなかったんです。

そこで、私は相手方の性格や生活スタイル、家族構成、人間関係を丁寧に調べていくことにしました。
すると、「プライドが非常に高く、自分の非を絶対に認めたくない」という気質が浮かび上がってきました。つまり、「支払いを渋っている」のではなく、支払うこと=自分が悪かったと認めることになるから、抵抗していたのです。

この心理構造が見えたことで、訴訟戦略も変わりました。
こちらから一方的に責めるのではなく、「相手の立場も一定は尊重して、話し合いでお互いの誤解を解く」というアプローチをとることにしたんです。
結果的に、相手も面子を保ったまま、和解という形で支払いに応じることになり、裁判にまで発展せずに解決できました。

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