今回は、そのクーリングオフについて、もう深く掘り下げていきます。ぜひ最後までご覧ください。
クーリングオフの基本的な考え方をおさらい
クーリングオフとは、一般消費者がその場の雰囲気に流されて契約してしまいやすい販売方法に対して、契約から原則8日以内であれば無条件で一方的に契約を取り消すことができる制度のことを指します。
「クーリング」とは「頭を冷やす」という意味に近く、契約を取り消すことで代金の支払い義務は発生せず、すでに支払った金額も返金されます。
一般消費者は商品やサービスに関する専門的な知識がないことが多く、その無知に乗じて訓練された営業スタッフが巧みに勧誘してくると、きっぱり断れずに契約してしまうケースがよくあります。
もちろん、契約を結んだ以上は守らなければならないというのが大原則です。ただ、早い段階であれば「やっぱりやめたい」と思ったときに、クーリングオフを使って契約をなかったことにできる制度が用意されています。
この制度は無条件で認められているため、契約を取り消す理由を業者に伝える必要はありません。こうした特別なルールによって、契約上不利になりがちな消費者を法的に保護しているのです。
クーリングオフが認められる典型的なケース
まず、訪問販売や訪問購入といった、自宅に営業スタッフが訪れるケースです。
たとえば、自宅に羽毛布団や消火器、教育用教材などを売りつけに来る場合が訪問販売です。訪問購入は、宝石・貴金属・家電製品などの買い取り目的で業者がやってくる場合を指します。
また、街中で「お兄さん、お兄さん、これ見てって」と声をかけられ、店舗や事務所に連れて行かれて契約させられるキャッチセールスや、電話やメールで呼び出されて契約させられるアポイントメントセールス、さらには友人や知人を通じて転売目的の商品を購入させられるマルチ商法なども、クーリングオフの対象となります。
特定継続的役務提供にもクーリングオフは適用される
数ヶ月〜数年にわたり継続して提供されるサービスの一部業種では、「特定継続的役務提供」としてクーリングオフが可能です。
これは比較的高額で契約トラブルが多く、消費者保護の必要性が高い分野です。
該当するサービスの例としては以下のようなものがあります:
- エステサロン、美容医療
- 語学教室、パソコン教室
- 結婚相手の紹介サービス
- 学習塾、家庭教師など
一方、以下のようなサービスは対象外なので注意が必要です:
- トレーニングジムやヨガ教室
- 病気やケガの治療を目的とした施術
- 語学以外の習い事 など
ただし、企業によっては独自に解約や返金の制度を設けている場合もありますので、各サービスの契約条件をしっかり確認した上で、解約手続きを進めるようにしましょう。
【質問①】脱毛サロンで契約してしまった!クーリングオフできる?
質問:
脱毛サロンで無料体験を受けるつもりだったのですが、スタッフに褒められ、気分が乗ってしまい、有料コースを契約してしまいました。その場で1万円の入会金も支払い、分割払いの契約書にも署名してしまいました。
ですが、帰宅後によく考えると他の出費もあって支払いが厳しそうです。こういった場合でもクーリングオフは可能でしょうか?
回答:
はい、可能です。見学や無料体験のつもりで出かけたものの、その場の勢いで契約させられるというのはよくあるトラブルです。
脱毛サロンのように、美容目的で継続的な施術が伴うサービスは「特定継続的役務提供」に該当します。契約期間が1ヶ月以上、かつ総額が5万円を超える場合には、契約日から8日以内であればクーリングオフが認められます。
クーリングオフの手続き方法
クーリングオフの申し出は書面で行う必要があります。
はがきでの通知が簡単ですが、証拠を手元に残すことが非常に重要です。
必ず郵便局の窓口から、特定記録郵便または簡易書留で送付し、受領証を保管してください。
通知文には以下を記載しましょう:
- 契約日
- 商品・サービス名
- 契約金額
- 契約解除の意思表示
- 自分の住所・氏名
送付前には書面のコピーを取り、受領証と一緒に保管しておきましょう。
分割払いローンがある場合の注意点
今回のように分割払いでローン契約をしている場合は、ローン会社にもクーリングオフの通知書類を送る必要があります。
これにより、ローン会社から脱毛サロン側へ「クーリングオフが行われた」と連絡がいき、支払い義務がなくなります。
念のため、ローン会社と脱毛サロンの運営会社の両方に、同じ内容の書面を送付しておくことをおすすめします。
この対応を取れば、支払いは一切不要となり、現金で支払った入会金も返金されるはずです。
もし業者が応じない場合は?
それでもなお支払いを求められたり、入会金が返金されなかったりする場合は、悪質な業者の可能性があります。
その場合は、国民生活センターや弁護士に早めに相談してください。
また、クーリングオフの期限には十分注意してください。契約日を「1日目」としてカウントし、そこから8日目の同じ曜日がリミットになります。
修正版:クーリングオフに関する具体的な事例と対応策
それでは、質問の2つ目です。
エステサロンを契約した後にクーリングオフのことを思い出し、解約しようとしたのですが、すでに期限を過ぎていました。
この場合、クーリングオフできずに泣き寝入りするしかないのでしょうか?
はい、このようなご相談もよくいただきます。
たしかに、契約から8日を過ぎた場合は原則としてクーリングオフの適用外になりますが、それでもまだ諦める必要はありません。
実は、よくあるケースとして「エステサロン側が契約時に法律を守っていない」というものがあります。
契約の際には、法定書面(契約内容の詳細やクーリングオフに関する説明など)を消費者に渡す義務があります。
この法定書面には、以下のような情報を記載しなければなりません。
- 商品やサービスの内容
- 代金や支払い方法
- 販売担当者の氏名
- クーリングオフの告知(赤枠で囲み、赤い文字で目立つように記載)
こういった内容が、書面で適切に説明されていなかった場合、たとえ8日を過ぎていてもクーリングオフが認められる可能性があります。
一方、法定書面が適切に渡され、クーリングオフの説明も正しく行われていた場合、原則としてクーリングオフの期間は過ぎています。
ですが、それでも「中途解約」という方法があります。
エステサロンなどの継続的なサービスの場合、まだサービスを1回も受けていない状態であれば、2万円のキャンセル料を支払うことで解約できます。
この場合、それ以上の支払い義務はありません。
高齢の親が契約した高額な訪問販売、取り消せる可能性は?
それでは最後、3つ目の質問です。
離れで一人暮らしをしている高齢の母のもとに、布団の訪問販売業者が現れて、30万円もする高級布団を購入させられてしまいました。
年金で生活しているため支払いは困難で、明らかに不要な買い物です。
最近は認知症のような症状も出ており、契約から1ヶ月が経っています。
このような場合でも、契約は取り消せるのでしょうか?
はい、こちらも深刻な問題ですが、まだ希望はあります。
訪問販売による契約は、特定商取引法の対象となっており、法定書面に不備がある場合には、クーリングオフの期間(通常8日)を過ぎていても解除できることがあります。
まず、お母様が契約時に受け取った書類を確認してみてください。
以下のポイントをチェックしましょう。
- 商品名(羽毛布団など)が記載されているか
- 営業マンの名前が明記されているか
- クーリングオフに関する説明が赤枠で囲まれていて、赤字で書かれているか
これらに不備がある場合、クーリングオフの説明義務が果たされていない可能性があり、契約から1ヶ月以上経っていても取り消しが認められるケースがあります。
さらに、営業マンがクーリングオフについて虚偽の説明をしていたり、威圧的な言動で判断を誤らせたような場合も、例外的にクーリングオフが認められることがあります。
また、認知症が疑われる場合には別の観点からも契約の取り消しが可能です。
医師の診断書があると、当時すでに判断能力が著しく低下していたと推定される可能性があります。
もし、診断書によって認知症と診断されていれば、家庭裁判所に「成年後見」や「補佐人」「保佐人」の申立てを行うことができます。
申立てが認められれば、契約を取り消す手続きも進めやすくなります。
このような手続きはご自身で進めるのが難しいかもしれませんが、その場合はお近くの弁護士や消費生活センターに相談してください。
LINEなどからも気軽に相談できる窓口が用意されていますので、まずは専門家のサポートを受けることをおすすめします。
修正版:まとめと今後のご案内
いかがだったでしょうか?
今回はクーリングオフに関する具体的なご質問に答える形で、より詳しく解説をしました。
クーリングオフという制度は少し難しく感じるかもしれませんが、正しい知識があれば自分を守る強い味方になります。
少しでも不安を感じたら、一人で悩まず、弁護士などの専門家に相談することが大切です。