今回は、養育費を減額する方法についてお話ししていきます。
離婚後に養育費の負担が大きく、減額できないかとお悩みの方もいらっしゃると思います。
養育費を減額できるにもかかわらず、今回お話しする手続きを行わずに、
高額な養育費を払い続けていると、たとえば毎月2万円多く支払っていた場合、
年間で24万円、10年では240万円も多く支払っていることになります。
そこでここでは、
- 養育費を減額できる条件
- 手続きの流れ
- どれくらい減額できるのか
についてお話ししていきます。
これまでに数多くの養育費減額をサポートしてきた経験をもとにお話ししますので、
ぜひ最後までご視聴ください。
養育費を減額できる条件とは?
まず、養育費というのは、子どもが自立するまで支払う義務のあるものです。
現在、成人年齢は18歳となりましたが、家庭裁判所では原則として20歳までの支払い義務を認めています。
また、大学進学が確実な場合などは、22歳までと定められることもあります。
離婚時に養育費の取り決めをした場合、その金額は原則として変更されません。
しかし、環境に大きな変化があった場合には、養育費を減額できる可能性があります。
減額を希望する場合、まずは相手と話し合いによって減額に合意することが必要です。
話し合いによる解決が難しい場合は、調停など裁判所を通じた手続きによって、養育費の減額を請求していくことになります。
裁判所で養育費の減額が認められるのは、以下の4つの条件のいずれかに該当する場合です。
ただし、これらに該当すれば必ず減額できるというわけではありませんので、詳しくご説明していきます。
条件① 相手が再婚し、子どもが養子になった場合
養育費を受け取る側が再婚し、子どもが再婚相手の養子になった場合、
再婚相手に子どもの扶養義務が発生します。
この場合、養育費を支払っていた側は、その分減額される可能性が高いです。
たとえば、毎月3万円の養育費を支払っていた方が、
毎月5,000円程度にまで減額されることもあります。
一方で、再婚はしたが養子縁組をしていない場合は、
再婚相手に扶養義務は発生しないため、減額は認められない可能性が高くなります。
しかし、再婚相手の収入が多く、世帯収入が大きく増加しているといった事情があれば、
その点を考慮して減額が認められるケースもあります。
ですので、諦めずに弁護士に相談してみることをおすすめします。
条件② 自分が再婚して経済的負担が増えた場合
次に、養育費を支払う側が再婚した場合も、減額が認められる可能性があります。
たとえば、
- 再婚相手の連れ子を養子にした場合
- 再婚相手との間に新たな子どもが生まれた場合
- 子どもがいなくても、再婚相手が専業主婦で扶養家族が増えた場合
このように、再婚によって経済的負担が増えたと認められる状況であれば、減額の余地があります。
条件③ 相手の収入が増加した場合
養育費を受け取る側が、離婚後に転職・昇給、または新たな職場への就職により収入が増えた場合、
養育費の減額が認められる可能性があります。
養育費は、そもそも家庭裁判所が公表している算定表に基づき、双方の年収から決定されます。
そのため、受け取る側の年収が大きく増加した場合には、減額の理由になり得るのです。
条件④ 自分の収入が減少した場合
養育費を支払う側の収入が減少した場合も、減額が認められる可能性があります。
ただし、単に収入が減ったからといって、すぐに減額できるわけではありません。
その理由が、裁判所にとって正当なものである必要があります。
たとえば、
- 病気やケガで働けなくなった
- 会社都合でリストラされた
などの場合は、正当な理由と認められる可能性があります。
一方で、養育費を払いたくないからと自己都合で会社を辞めたような場合には、
裁判所が減額を認めることは基本的にありませんので、その点は注意が必要です。
養育費減額の流れについて
続いて、養育費の減額条件を満たす場合に、どのような流れで養育費を減額していくかについてお話ししていきます。
まず最初に行うのは、元配偶者との話し合いです。
養育費は、双方が合意すれば減額が可能です。
ただし、相手が合意しなければ、養育費の減額はできません。
そのため、相手に対して「養育費の減額はやむを得ないことである」という点を、具体的に説明して納得してもらう必要があります。
話し合いの際は、相手に不快な思いをさせないように配慮しながら、
「こういった事情がある」「このような理由で」「算定表を見ても妥当な金額である」といった形で、
理論立てて丁寧に説明できるように準備してから交渉に臨みましょう。
また、相手が感情的になるケースもあるため、
仮に審判や裁判所を使った手続きを取ったとしても減額は認められる可能性がある、
ということも伝えておくとよいでしょう。
合意ができたら公正証書にする
双方で養育費の減額に合意できた場合は、「公正証書」という形で文書にしておきましょう。
公正証書とは、お近くの公証役場で、
「このような取り決めをしました」という内容を説明し、
公証人が正式な文書として作成するものです。
これを作成しておくことで、「言った・言わない」のトラブルを防げるだけでなく、
将来的なトラブルの予防にも非常に役立ちます。
相手が話し合いに応じない場合は調停へ
もし、相手が話し合いに応じない場合や、折り合いがつかない場合は、
家庭裁判所に「養育費減額の調停」を申し立てることになります。
調停では、家庭裁判所の調停委員会が間に入り、話し合いを進めていく形になります。
この際、調停委員会から相手方に説明してもらう必要があるため、
委員に対して自分の意見や根拠をしっかり主張することが重要です。
根拠が不明確だと、調停委員も相手を説得することができません。
もちろん、調停はご自身1人でも進めることができますが、
弁護士をつけることで、より確実に減額が認められやすくなります。
弁護士が「このケースは法律的に減額が認められる」と調停委員を説得し、
その調停委員が相手を説得する、という流れになるため、説得力が増します。
調停が不成立だった場合は審判へ
調停手続きを取っても、相手方が出席しなかったり、折り合いがつかなかった場合は、
「審判」という手続きに移行します。
審判では、調停で出された資料などをもとに、裁判官が判断を下します。
裁判官が、「この程度の減額が妥当である」と結論づけ、養育費を決定する流れになります。
以上が、養育費減額の大まかな流れです。
養育費減額請求時の注意点
最後に、養育費の減額を請求する際の注意点についてお話しします。
まずは、養育費の妥当な金額を把握することが大切です。
相手と交渉する前に相場を知らずに、
あまりにも低い金額を提示してしまうと、交渉が難航します。
逆に、相場を知らずに交渉した結果、本来より高い金額で合意してしまう恐れもあります。
ですので、**裁判所が公表している「養育費算定表」**を確認したり、
弁護士に相談するなどして、まずは相場を正しく把握することが重要です。
証拠をそろえることの重要性
養育費減額請求の際は、証拠をきちんと揃えておくことも必要です。
たとえば、子どもが再婚相手の養子になった場合には、子どもの戸籍謄本を用意しましょう。
また、ご自身の収入が減少した場合には、給与明細や源泉徴収票など、
収入減を証明できる資料を準備する必要があります。
子どもの戸籍謄本については、ご自身の直系親族であれば本人でも取り寄せ可能です。
給与明細や源泉徴収票は、勤務先から発行されるものを提出すれば問題ありません。
このように、証拠をしっかり揃えてから相手に請求することが大切です。
弁護士に相談することも検討を
今回お話しした通り、養育費を減額できる条件や手続きの流れを理解したら、次は実際に行動する段階です。
「自分で対応するか」「弁護士に依頼するか」は人それぞれですが、
注意点でもお伝えした通り、1人で交渉すると相手を説得するのが難しかったり、
調停委員をうまく納得させられないというリスクもあります。
たとえば、養育費が月1万円違うだけでも、18年間支払うと216万円の差になります。
ですので、弁護士に依頼するかどうか迷っている方には、
弁護士をつけてでも、月1万円、あるいは5,000円でも減額できるよう交渉することをおすすめします。